公益社団法人兵庫県看護協会訪問看護事業部
邉見 知惠子

訪問看護の立場から

はじめに

未曾有の甚大な被害をもたらした東日本大震災。災害は無常にその人の生活ををその人の人生を大きく変えてしまっている。訪問看護は対象が変化する状態や環境に、よりよく適応できるよう支援する役割がある。被災地の人々が、それまでの生活を方向転換し、適応し、復興するにはあまりにも過酷な状況であるが、大きな試練を乗り越えてほしいと強く願っている。また乗り越えられるような強力な支援が必要と強く思う。訪問看護の立場から災害支援を報告する。

活動内容

期間:平成23年4月8日~11日

活動内容

  1. 診療の補助が主な活動。診察の介助、診療に伴う与薬や点滴注射。医薬品管理、診察室環境整備
  2. 高血圧、風邪、下痢・嘔吐症状への対応、エコノミー症候群予防指導
  3. 健康相談、心身のケア、支援の必要性の判断
  4. 要介護状態になり、避難所生活に限界がある人を施設サービスに繋げる支援
  5. 褥瘡処置方法指導、福祉用具の手配依頼、
  6. 避難所の食事内容、衛生管理を気配りし、必要な支援を行なう
  7. 石巻赤十字病院でのエリア全体ミーティングに参加。

活動の評価

1)看護活動の目的・役割について

今回の災害支援は広域連合で、医師会と協働で行なう救護所の運営が主な任務であった。看護の役割は多岐にわたる為、チームの役割を十分理解した上で看護活動を行わないと独りよがりの支援になったり、思い描いた支援ができず達成感を感じられなかったりする。私も当初、役割が明確に解らず、訪問看護の立場から避難所の支援に重点をおいた関りをしたいと思っていた。しかし、支援チームの役割上無理だと解り、診療の補助を優先しながら、被災者の心に寄り添うことを心がけ、健康相談やこころのケアを行った。

2)チーム医療の重要性

被災地での診療は、日常の在宅医療同様に医師・看護師だけでなく、薬剤師、事務職、地域の行政機関、保健師、ボランティア等の多職種チームで専門性を発揮しながら互いに連携しての診療が重要だった。今回は薬剤師、事務職が救護所支援の下支えとなっていた。

3)地域ケアの視点

援助の必要性は多様にあるが、災害サイクルの沿った支援が必要で、何れは地域の人たちで自立し、復興を目指さなければならない。訪問看護の視点では、地域のステーションの再開に向けて、周辺を整備する支援(再開に向けた届出の整備、帳票類の整備、訪問看護物品の提供など)が出来ないものかと思う。また、訪問看護だけでなく、介護、ケアマネ等の諸サービスを支え、地域包括ケアを進めることも重要と思われる。このためには何より行政機関の復旧を望む。